この記事ではポラロイド社の名作インスタントカメラ"SX-70 First Model"を紹介する。カメラ本体の解説、使い方、実際にSX-70で撮った作例まで。
Polaroid SX-70 First Modelについて
SX-70は1972年にポラロイド社から発売された折り畳み式インスタントカメラで、今回紹介するのはそのファーストモデル。"アラジン"、"SX-70 model 1"、"SX-70 Original"と呼ばれていることも。デザインはアメリカの工業デザイナー、ヘンリー・ドレイファス(Henry Dreyfuss)によるもの。
SX-70は発売当時から現代に至るまで多くの写真家やアーティスト達に愛用されている。中でもアンディ・ウォーホル(Andy Warhol)が使用していた事は有名で、ウォーホルが実際に使用していたSX-70のファーストモデルは2020年に行われたオークションで13750ドル(約150万円)という金額で落札された。
ウォーホルの他にも、ネット上ではジョン・レノン(John Lennon)やヒースレジャー(Heath Ledger)がSX-70を構えている写真も見られる。
金属製に見えるSX-70 First Modelのボディは実はプラスチックにメッキを施したものだ。
また、同じファーストモデルでもレンズダイヤルに放射線状のラインが入っている前期型とフィート表記(ft表記)が入っている後期型のものがある。
SX-70はカメラの分類としては一眼レフになる。同社製の"OneStep Closeup"のような600シリーズなどのカメラとは異なり、実際に撮影される像をファインダーから確認すること出来る。 SX-70で使用可能なフィルム
使用可能なフィルムはPolaroidの低感度フィルムColor Film For SX-70とB&W Film For SX-70(モノクロフィルム)。どちらも現在、8枚入りで1パック大体3000円前後で販売されている。ASA感度は160。このフィルムのカートリッジには使い捨てのバッテリーが内蔵されていて、これがカメラの電源となる。
そのままの状態では上記のSX-70用の低感度フィルムしか使用する事が出来ないが、別売の"NDフィルター"を使ったり、専門店に持ち込んで改造をすれば600シリーズ用の高感度フィルム(ASA感度640)も使用する事が出来るようになる。
SX-70が発売される1972年以前のインスタントカメラのフィルムはピールアパートタイプ(引き剥がし式)と呼ばれるものだったが、SX-70からより取り扱いが簡単なモノシートタイプの"インテグラルフィルム"というフィルムが使用されるようになった。 SX-70の発売から36年後の2008年にはPolaroid社の破綻によりフィルムの生産が停止しまうが、"IMPOSSIBLE PROJECT"というポラロイドフィルムの復活を願う有志達の働きかけで2010年にまた生産が再開し、再びフィルムを手に入れられるようになった。
構成・仕様
A.ピントダイアル
→ファーストモデルは手動でピントを合わせるマニュアルフォーカス。ファインダーを覗くとのスプリットイメージと呼ばれる横線の入った円があり、このスプリットイメージの像のズレが合うようにダイヤルを調整するとピントが合う。ピントが合わせられる距離は26cm~無限遠。
B.シャッター
→電子式のプログラムシャッター。シャッタースピードを14秒~1/180秒の間で自動調整してくれる。
撮影時はフィルムが出てくるまでシャッターは押したままにしよう。シャッタースピードが遅くなる室内などの暗い場所では、シャッターを切ってもしばらくフィルムが出てこないこともある。その間手ブレの抑えるような工夫が必要。
C.フィルム排出口
→撮影時に指で塞がないようにしよう。
D.フラッシュ差し込み口
→別売のフラッシュバーをここに差し込めば、フラッシュを使用できるようになる。
E.明暗コントロール(露出補正)
→カメラが自動で判断する写真の明るさと自分がイメージした明るさにズレがあるなら、ここで明暗を調整出来る。明るくするには白い部分が多く見えるように、暗くするには黒い部分が多く見えるようにダイヤル回す。
明るくするには白い部分が多く見えるようにダイヤル回す。 暗くするには黒い部分が多く見えるようにダイヤル回す。
F.露光センサー(フォトセル)
→SX-70には自動露出機能が付いていて、カメラが自動で適正な明るさの写真を撮ってくれる。カメラを構える時にはここを指で塞いでしまわないように注意しよう。
G.レンズ
→4枚構成116mm F8光学ガラスレンズ
H.フィルムカウンター→フィルムの残枚数が分かる。新たにフィルムカートリッジを挿入すると"10"になる。現在発売されているフィルムは8枚入りなので"2"の表示でフィルムは空だ。
I.ファインダー
SX-70の使い方
1.SX-70を立ち上げる。2.フィルムドアを開く
3.シール(タブ)が貼ってある方が手前、イラスト入りのダークスライド(遮光紙)の方を上にしてフィルムカートリッジを装填
4.フィルムドアを閉じるとダークスライド(遮光紙)が排出される。
5.必要であれば明暗コントロールを調整する。
6.カメラを構える。
7.ピントダイアルを回してピントを調整する。
ダイアルを回して調整すると
ピントが合う。
8.シャッターを切る9.出てきたフィルムはすぐに遮光しないと感光し赤みを帯びた仕上がりとなってしまう。出てきたらすぐにポケットにしまったり、ダークスライドを被せるなどして、現像が終わるまで遮光しよう。
SX-70作例
SX-70を使って実際に撮った写真がこちら。
B&W Film For SX-70使用、屋外で撮影、明暗コントロール中央。
代々木競技場を撮影した写真。太陽光を建物で隠しあえて逆光で撮影した。
B&W Film For SX-70使用、屋外で撮影、明暗コントロール中央。
走行中の山手線を撮影した写真。意外とブレなかった。
B&W Film For SX-70使用、屋外で撮影、明暗コントロール中央。
B&W Film For SX-70使用、屋外で撮影、明暗コントロール中央。
Written by 松永